前回まででバーボン樽熟成の目的や、樽材を構成する化合物とウイスキーの反応の効果に触れてきました。
今回はいよいよ樽材へのチャーリングについてです。
あなたが責任者だったら
もし、あなたがウイスキー生産者で、好きなだけチャーリングしていいと言われたら、パンチの効いたフレーバーを求めて より濃いチャーをするでしょうか?
バーボンウイスキー蒸留業者や樽製造業者は 望むままに好きなだけチャーすることができますが、実際にはそれをしません。
やりすぎてしまうと モザイク画のようにひしめき合うオーク化合物たちをただの炭素に変えてしまうからです。
これは前回説明した職人たちの仕事(もしくはいのち)を奪ってしまうことになりますね。
チャーレベル
チャーのレベルは、生産者によって異なりますが、一般的には#1から#4までのレベルが使用されています。
そして殆どの樽は1分以上チャーされることはありません。
しかしながら、ブラントンなどで知られるバッファロートレイス蒸留所は、その無限の実験のなかで
#7レベルのチャーを施したバーボンを作り出したり、3分半もの間直射で焼くという手法を採用したりしています。
ここで断っておきますが、バッファロートレイス蒸留所のウイスキーの味は決して、液体の煙のような味はではありません。
この蒸留所が世に送り出したシングルバレルやヴィンテージバーボンを味わったことのある人ならわかると思いますが、とても奥深く、長く楽しめる味わいをしています。
チャーレベルごとの違いは 焼き入れ秒数の長さで区別されていて、
#1(ナンバー1)は15秒、#2は30秒、#3は35秒とするのが標準で、#3が一般的に採用されているそうです。
#4は55秒間で、こちらは伝統的なバーボンに多くつかわれてきた手法。
別名「アリゲーターチャー」としても知られ、オーク材の譜表にはワニ革のようにざらざらした光沢のある質感が現れます。
チャーリングの第二の利点
適切なチャーリングによって 前回お話した化合物たちが生きてくるわけですが、
チャーの利点は 化合物による反応だけでなく、炭化によるすばらしい副産物を私達にもたらしてくれます。
それは濾過機能です。
よくある水の濾過フィルターのなかに 黒い小石のようなつぶつぶを見たことがあるとおもいます。
これは炭素で、ろ過には一般的に有用なことが知られています。
また、炭素フィルターが 水の味自体をまろやかにしてくれる効果も知られていますね。
ジャックダニエルに採用されているチャコールフィルタリングの狙いはまさにそれです。
ちなみに これはリンカーン・カウンティ・プロセス(Lincoln County Prcess)と呼ばれ、多くのテネシーウイスキーに採用されています。
炭素で裏打ちされた樽が、若いウイスキーに含まれる硫化化合物のような不要なものを除外してくれるのです。
第三の利点
またワニ柄の樽にはこんなボーナス的な利点もあります。
炭化した表面に生ずる深い割れ目が、蒸留酒が木材の内部に浸透したり、あるいは出てきたりを繰り返すことを可能にしています。
深くチャーされた樽は 焦げていないオーク樽より、より多くの反応を促してくれるのです。
チャーのレベルはあらゆる種類の蒸留酒に対して決定されるわけではありません。
確かに、あらゆるウイスキーや蒸留酒で施されていることではありませんが、このチャリーングという手法は、木材との相互作用に大きな影響を与える可能性があります。
チャーの厚み
最後に、チャー層の厚さは、オーク材の厚みに比べて 8分の1から4分の1程度の間である傾向があります。
全体の材の厚みは2.5センチほどですから、いままでのお話はすべて1センチにも満たないこの層での出来事です。
ですが、ウイスキーの味の約半分を左右すると言われるほど、この熟成の工程が重大な役割を担っています。
いかがでしたか。
全3回でお送りしたチャーリングの内容は今回で最終回となりました。
この記事が あなたのウイスキーを楽しむ時間に少しの助けになれれば幸いです。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
前回までのお話はこちら。
この記事で参考にしたサイトの原文はこちら。
What Are Barrel Char Levels And How Do They Affect The Way My Whiskey Tastes?
「チャーレベルの違いとは、アリゲーターの副産物」への1件のフィードバック